その胸の痛み、原因は?循環器医師が説明!

医学・健康

胸痛というものにはいろいろな種類があります。

私の専門は循環器ですので、様々な胸痛の方がいらっしゃいます。

循環器の医師として、胸痛の場合何を考えて診察をしているでしょうか。

流れ含めて鑑別を考えていきたいと思います。

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目次・鑑別疾患

#1狭心症・心筋梗塞

#2逆流性食道炎

#3気胸

#4帯状疱疹

#5肋間神経痛

#6プレコーディアルキャッチ症候群

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狭心症・心筋梗塞

循環器内科である以上、こちらの病気だけは絶対見逃さないようしています。

専門医になるとある程度問診で鑑別はつきます。基本的に心筋梗塞の胸痛は持続します。典型的な心筋梗塞の場合は、耐え難い痛みのため救急車で搬送されることがほとんどで、クリニックに歩いて受診される方はまれです。

クリニックを受診されるような方は前日からの胸痛、2-3日持続する亜急性心筋梗塞といわれる状態のかたが多いです。ただ、心電図をみれば一目でわかるため、即救急搬送になります。

ほかは狭心症、狭心症も不安定狭心症、労作性狭心症、冠攣縮性狭心症、微小血管型狭心症といくつかに分類されます。

狭心症の鑑別はなかなか困難で、診察時に胸痛がなければ心電図変化も乏しいため、各種検査で判断する必要があります。

月に2-3回とかの胸痛ならば緊急性の高い狭心症の可能性は低くなります。ただ、胸痛の頻度が増えたり、ここ数日胸痛が多いなと思うようなら狭心症を疑ってもよいかもしれません

狭心症、心筋梗塞の痛みで多いの訴えは胸の締め付けられる感じ、重たい荷物をのせられている感じが多いです。よく言われる左肩の痛み、放散痛といいますが、こちらは狭心症では少なく、心筋梗塞によくみられます。

基本の胸痛は前胸部痛、左側優位ですので、そういった痛みが多くみられるようならなるべく早く受診するようにしましょう。

 

逆流性食道炎・胃潰瘍

胸痛との鑑別にあがるものとして、消化器症状があります。

食道の位置が胸骨、胃の入り口である胃噴門部が心窩部の高さにあるため、逆流性食道炎は胸痛の鑑別によくあげられます。

胃薬を処方されているが、効かないといって、実際は心筋梗塞だったというかたを何人か診察したことがあります。

心筋梗塞は痛みによって嘔吐したりするので、診察した医師の専門によっては消化器症状として判断される場合もあります。ただ逆もあり、狭心症と思っていたのが実は、逆流性食道炎だったということもあります。

こちらの痛みは様々です。意外と多いのが、夜間就寝時に胸痛、むねやけを訴える方がいます。

胃酸の逆流が、横になっている間に起こりやすいため、消化器症状を自覚することはあります。私は心臓か食道が鑑別が困難な場合は、胃薬を処方しつつ心臓を精査していくスタイルです。

胃薬が効果あるようなら、胃カメラなどで検査してもよいかもしれません。ただ、専門が何科であろうと、まずは死に直結する狭心症・心筋梗塞を鑑別すべきです。

グレードN (正常) ⇒ M ⇒ A ⇒ B ⇒ C ⇒ Dの順に病気が進行します。

気胸

胸痛でも気胸の方はいます。肺に小さい穴があき、空気がその穴から漏れることで、肺がしぼんでしまう病気です。

気胸を疑う場合は比較的好発年齢が重要となります。よくいわれているように、やせ型の若いかたは気胸になりやすいです。

10-30代の男性に多いですね。あまり太った中高年のかたに気胸はいません。

気胸の特徴は、やはり吸気時の胸の痛みです。しかも片側性が多いです。突然、息苦しさや息を吸ったりすることでの痛みを自覚するため、みなさん前日から痛みを感じているなど比較的発症日を認識してている方は多いです。

私は息苦しさを感じているような、若い男性のかたは聴診で確認します。やはり呼吸音がなくなっています。確認として胸部レントゲンを使用します。

若い方が多いこともあり、痛みを我慢した結果、Ⅱ度やⅢ度と入院適応を認める重症の気胸をよくみかけます。

入院するような気胸の場合は、胸に穴を開けてドレーンという管を使って、肺から漏れている空気を逃す治療を必要とします。

クセになることも多いので、絶対禁煙をおすすめしています。

 

左側の肺の3度気胸です。
左肺門部にしぼんだ肺が確認できます。

帯状疱疹

こちらも胸痛の原因となります。ただ、今まであげてきた胸痛とは痛みの性情が違います。

今までの胸痛は臓器的な痛みですが、こちらは表面的な痛みを訴えるかたが多いです。

過去にみずぼうそうに感染したことがあるかたは、治癒後体内に水痘・帯状疱疹ウイルスが潜んでいる状態になります。

疲れ、ストレス、加齢などで免疫力が低下した際に、この水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化され、神経節を攻撃します。結果、帯状疱疹を発症するのです。

神経痛のため、発症した患者さんはピリピリした痛みを訴えます。場所は胸にかぎらず、顔面から大腿にかけて出現します。

基本的には神経分節に一致して出現するため、片則性が多いです。

数日前からピリピリした痛みがある、服が擦れるだけで痛みがあるという場合は、痛む皮膚に赤い発疹があるかを確認してください。

なんらかの発疹があるようなら病院を受診してください。

帯状疱疹の場合は、なるべく早く抗ウイルス薬を投与する必要があります。

放置して痛みを我慢した場合、帯状疱疹後の神経痛は数ヶ月は持続、下手すれば一生涯、神経痛で悩まされることになります。

神経痛が一生持続するような場合、鬱病になったりするほどの痛みに悩まされてしまうので、我慢せず病院を受診してください。内科でも皮膚科でも良いと思います。

左前胸部に出現した帯状疱疹
大きさ、範囲は様々

肋間神経痛

こちらも神経痛の一種です。肋間神経といって肋骨に沿って走っている神経が痛むことで生じる痛みです。

ただ、いきなり肋間神経痛ですねと診断することはありません。今まであげた病気を否定したうえで、最終的におそらく肋間神経痛ですねと診断になることがほとんどです。(除外診断ともいいます)

肋間神経痛自体は仕事のストレス、人間関係や環境変化など外的因子が誘引で生じることがほとんどです。痛みの性状も多彩で、チリチリした痛みや、ピンポイントの痛み、痛みが移動する、痛み自体があちこちにあるというように特定の特徴的な痛みはありません。

体の奥の痛みというよりは表面的、肋骨に沿った痛みを訴えるかたが多い印象です。

治療もストレスなどを避けること、鎮痛薬投与で経過をみることがほとんどです。

ただ自己判断で肋間神経痛と決めつけるのではなく、胸痛がある場合は病院受診をおすすめします。

 

プレコーディアル・キャッチ症候群

こちらはあまり聞くことはない病名かもしれません。

ただ循環器内科の医師であれば知識として知っておいて損はありません。これもあくまで除外診断ということになります。

好発年齢は6歳から20代中盤までと若年の方に多いです。

症状は安静時に起こりやすく、左前胸部に刺すような痛みが数十秒から数分ほど起こることが典型的です。痛みとしてはかなり強い痛みで生じると動くことができなくなるほどです。

痛みの部位は比較的ピンポイントの痛みが特徴的で、冷や汗などもありませんし、痛みが消えるとピタッとなくなります。

原因は不明で、多くの場合が筋骨格系の成長とかかわる胸痛なのではないかと考えられています。

予後も良好で、年齢経過とともに胸痛は全く認めなくなります。

私も当時は医学生でしたのでわかりませんでしたが、この胸痛症状を認めていたことがあります。ただ、比較的鈍感なので放置していたら自然になくなり、今となっては全くこの症状は起こりません。若い人特有の症状と思われます。

ただ、いきなりこの病気の診断をすることはなく、あくまで検査によって心臓などの他の病気を鑑別・否定したうえでおそらくプレコーディアルキャッチ症候群でしょうというのが一般的です。


胸痛の鑑別

 

#1 狭心症・心筋梗塞

#2 逆流性食道炎

#3 気胸

#4 帯状疱疹

#5 肋間神経痛

#6 プレコーディアル・キャッチ症候群

 

胸痛といっても上にあげたように様々な鑑別があります。

何もない場合もありますが、病気によっては早急に治療、内服によって症状が軽く済むことが多いです。

いまや自身でインターネットで調べることも可能です。

ただ、内容によってはどんどん不安になることが多々あります。

心配ならご自身で判断されず内科・循環器内科などに相談されることをおすすめします。

 

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