ウイルス!ウイルス!! 開業医があらためてウイルスについて勉強した

医学・健康

”COVID-19”

嫌な名前です。2020年1月から聴くようになり、今や外に出ても人や車はまばらですし、お店に行っても欠品が目立ったりと天気は良くてもなんとなく気持ちがザワザワ、落ち着かない日々を過ごしています。

私の診療所も、感染防御対策をしながら熱の人を診察したりしています。今までは気にせず診察していた普通の風邪でも、細心の注意をはらいながら、対応しております。

前回はCOVID-19に対しての論文を評価し、インフルエンザよりは致死率が高く、若年者より高齢者のかたが感染した場合のリスクは高いといったことを確認しました。ただ、今回はさらに、原点である”ウイルスとは何か”を確認しようと思い、開業医が、医学部時代に少しかじった知識をブラッシュアップしようと思い、勉強してみました。

 

  目次

  1. ウイルスとはなにか
  2. ウイルスの種類は
  3. どうやって感染するのか
  4. 治療薬、予防は
  5. 免疫力アップするには
ウイルスとは

ウイルスとはは、多生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。

生命の最小単位である細胞やその生体膜である細胞膜を持たないので、小器官がなく、自己増殖することがないため、非生物ともされる。ただ、遺伝子を有している点からは生物の特性を持っている

ちなみにウイルスとは、「毒液」または「粘液」を意味するラテン語 virus に由来している。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

   

つまりウイルスとは、

  • 細胞がない(細菌の1/50程度の大きさ)
  • 栄養を摂取したり、エネルギーを産生しない
  • 自力で動くことはできない
  • ウイルス単体は自力で増殖できない

のような特徴があげられます。生物の一つの構成単位である細胞がなく、より単純な構造になっているわけです。また、ウイルスは遺伝情報を持つ②核酸(DNAまたはRNA)をタンパク質の殻( ①カプシド )でつつむような構造をしています。

 

ウイルスにはエンベロープを持たないウイルス、エンベロープを持つウイルスという二種類のタイプがあります。⑥エンベロープというのはウイルスをつつむタンパク質の膜で、ウイルスが細胞内に侵入する際に役に立ちます。仮にエンベロープがなくなると、ウイルス自体に細胞へ侵入する力が弱くなるため感染力は低下します。ちなみに、エンベロープ自体は石鹸に弱いので、石鹸による手洗いによって、感染が予防できます。

インフルエンザウイルスはこのエンベロープをもつタイプのため、石鹸での手洗いが効果的ということです。今問題になっている新型コロナウイルスもエンベロープをもつウイルスであり、石鹸での手洗いが有効ということです。

また、核酸の種類によってDNAウイルス、RNAウイルスに分類されます。

ウイルスの種類は?

国際ウイルス命名委員会の分類では2013年までに、約3000種類のウイルスが登録されています。そのうち人の病気にかかわるウイルスは数百種類ともいわれています。たとえば、DNAウイルスでも

ヒトパルボウイルス(伝染性紅斑)、アデノウイルス(流行性角結膜炎)、ヘルペスウイルス科に単純ヘルペス(口唇ヘルペス)、水痘・帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルスなどがあり、

RNAウイルスでも狂犬病で有名なラプドウイルス、パラミクソウイルス科の麻疹、フラビウイルス科にはデング熱、日本脳炎、C型肝炎ほかにもノロウイルス、ロタウイルス、ロタウイルスと聞いたことのあるウイルスがたくさん指摘されています。

 

3D illustration of Coronavirus (© istock.com/Dr_Microbe)
どうやって感染するの?

ウイルスの感染後の増殖のしかたは簡単にイメージするとウイルスが細胞に吸着、くっつき、ウイルスが細胞内に侵入していきます。そのあと。”脱殻”といわれるウイルスの周りのタンパク(自分の服)を脱いで、あとは細胞内でどんどんと自分のRNA,DNAを増やしていくのが一般的な増殖方法といわれています。

エンベロープがある場合はもっと複雑ですが、基本的な増殖スタイルは同じようです。

また、一つの細胞内でどんどんとウイルスを増殖させ、一気に放出していくため、感染していてもみかけ上はウイルスが存在しない時期があります。

感染経路としては

・空気感染

・飛沫感染

・接触感染・経口感染

があげられます。

治療薬はないのか?予防は?

治療薬を研究するにはウイルス自体が必要となりますが、ウイルスによっては人工的に増やすことが難しかったりするウイルスもあります。結果、少ないウイルスでは十分な研究もできないため治療薬を開発するのも困難になったりします。ただ、技術的な進歩もあり、抗ウイルス薬の研究もどんどん進んでいます。初期の抗ウイルス薬は、ヒトの細胞自身も傷つけてしまう副作用が強くでたりしていました。

 1980年代になり、AIDSの原因ウイルスとしてHIVウイルスが特定され、世界中に蔓延するようになり、世界中で研究が開始されました。また、技術面でも遺伝子研究が進んできたため、様々な薬が開発されるようになりました。その結果、抗ウイルス薬の開発が飛躍的にすすむようになりました。

風邪というものは病気の名前ではなく、風邪症候群という状態なわけです。風邪症候群の原因となるウイルスには、ライノウイルス、コロナウイルスが多く、続いてRSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどがあります。これらに対抗できる抗ウイルス薬はないため、基本的には自己免疫によって、ウイルスを退治することが一番の方法です。

ウイルス感染後の一番の治療薬は免疫力をあげるために十分な睡眠や安静、水分栄養補給が重要になります。あとは咳、鼻水、下痢、胃痛などの各症状に対して治療薬、対症療法が中心となります。

またウイルス感染の予防としては十分な手洗い、適度な温度・湿度を保つ・マスクの着用があります。石鹸での手洗いでウイルスの感染力は低下しますし、ウイルスは乾燥していると長い時間空気中を漂いますが、高温・多湿に弱く、薬よりも部屋の湿度をあげることがほうが効果があるともいわれています。湿度50%では、ウィルスの生存率は約3%にまで低下するといわれます。

免疫力アップには

十分な睡眠・休養

免疫機能をもつリンパ球の力は自律神経の働きと連動しており、十分な休養と睡眠などでリラックスしている時に高まります。寝ている間に、身体の中ではリンパ球が増えて免疫力を高めてくれています。しっかりと睡眠をとりましょう。

栄養バランスのあるしっかりとした食事

体力をつけて免疫力を高めるには、納豆・ヨーグルト・バナナ等のように栄養価が高く消化の良い食品がより効果的です。細胞間の結びつきを強くし、ウィルスや細菌の侵入を困難にするビタミンC、皮膚や粘膜を保護して正常に保つ働きや、活性酸素の発生を抑える働きのあるビタミンAなが豊富な食品も意識してとるようにしましょう。

ストレス・疲れをためない

肉体的・精神的な疲れやストレスも、自律神経を不安定にして、免疫力・抵抗力を低下させます。ストレスによってアドレナリン等が増えると、肝臓から蛋白質、ビタミン、ミネラルなどが消費され、新しい免疫細胞をつくる栄養分がなくなってしまいます。気分転換や、無理をしないといったことを意識して下さい。

 

今回は自分なりに、ウイルスというものをまとめてみました。医者になってからは、感染症というとウイルスよりは細菌感染をどのように治療していくかとったことが中心になります。いわゆる抗生剤を、どの細菌にどれくらいの期間、量を使うかといったことが一般的になります。ウイルスは、抗ウイルス薬というのは少なく、医師として対応できることも少ないため、どうしてもウイルスということに対して目を向けなくなってきてしまいます。こんな時期だからこそ、あらためて確認できることもありました。

日々ブラッシュアップは大事ですね。

それでは良い1日を

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